ガア助のエール【2】

(玩助)フレーー、フレーー、りーか!
(和雄)フレーー、フレーー、りーか!フレ、フレ、りーか!フレ、フレ、りーか!

TVドラマ第5話「小さな恋の物語」より

前回の<ガア助のエール【1】>の続きになります。第5話「小さな恋の物語」における鈴本梨花の引っ越しシーンは、本当に何度見ても涙が止まらない必見の名場面ですよね。本稿ではエール部分を取り上げますが、梨花については別の機会にもう一度取り上げてみたいと思っています。

さて、第5話と言えば『みにくいアヒルの子』全11話のうち、折り返し地点にさしかかるところと言って良いかもしれません。そこに「ガア助のエール」が再び登場するわけです。
今回引用した図版と第1話の図版を比較してみてください。カメラの構図やポジションが非常に類似していることに気づきます(最終話のエールも同様)。これは単なる偶然やスタッフの趣向というより、周到な演出であるとも考えます。前回、ドラマの初めと終わりを貫くエールの役割について論じましたが、カメラワークが固定されることでそれぞれのイメージが重なり合い、「ガア助のエール」はより印象深く私たち視聴者をとらえている気がします。

今回のエールは、梨花が出発を待つトラックへと歩んでいく中、ガア助が突如叫ぶのですが、彼としては決して梨花へのエールを初めから予定していたわけではないでしょう。大好きだった徹やクラスの友だちとの別れを悲しみながらも、和雄の気持ちを受け止めてくれた梨花に心打たれ、ガア助はとっさにエールを送ったように思うのです(註:小説版『みにくいアヒルの子』にはエールの描写が無く、ドラマ独自の演出と言える)。同時にガア助にとって、教え子との別れは清との別れを想起させるのであり、梨花の去っていく姿から清のことを少し思い出したのかもしれません。「ガア助のエール」はその重みを確実に背負っています。

実は図版からも分かりますが、突然のエールに和雄が驚き、先生を振り返る一瞬があります。そこで注目したいのは、チラッとも和雄を見ないで梨花だけを真っ直ぐ見つめるガア助のまなざしです。その強い気迫を和雄が受け止め、今度は彼が同じように彼女にエールを送ります。ガア助は指示を出したり、事前に打ち合わせをしていたわけではありません。真剣なガア助から、和雄自身が“学び”とったわけです。
一方、梨花は歩みを止め、振り返らずに背中で和雄のエールを聞いています。すぐに振り向かなかったのは、和雄が自分のことを好きなのだと理解しているからではないかと想像しますが、幼いながらにも複雑な感情がその背中から伝わってくるようです。エールを受け止めた梨花が振り返る時には、「小さな恋」を経験したような、なんとも大人っぽい表情をみせているのです。もちろん受け取り方や解釈は人ぞれぞれですが、『みにくいアヒルの子』が子どもたちの複雑な感情の機微を表現したドラマであることは間違いありません。

ガア助から和雄へ―(大げさに言えば)ここから受け継がれた教えは、最終話の4年3組全員のエールへと繋がっていきます。彼ら・彼女らが、ガア助流の“エール”に何を託したのか、次回のブログでさらに続きを見ていきましょう。

(【3】へ続く)

❀余談ですが、みにくいアヒルの子スタッフ編『みにくいアヒルの子 ガァ助とその仲間たち』では、演出家の一人・武内英樹さんが印象に残っているシーンとして第5話を挙げ、「設定では、和雄は梨花の家まで何キロも走ってくるっていうんで、実際に和雄に走らせたんですよ。もう、三百メーターの坂道を、本番前ごとに五往復くらいさせて。ちょっと可哀相なんですけど・・・、でもここでね、実際走って来たって芝居を撮るためには、その場で「用意、スタート!」って言っても、これはしらけたものになりますよ。やっぱり、リアルな息使いとかね、そういうものがないと。」と語られています。和雄の汗だくの力強い演技には、このような裏付けがあったのですね!

※引用図版の出典:
VHS『みにくいアヒルの子2』(1996年、日本コロムビア)
第5話「小さな恋の物語」のワンシーンより。

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