

写真は第1話のエンドロールのワンシーンですが、枯れた果てた「空き地」のどこが“名場面”かと思われるかもしれません。しかし、ガア助が子どもたちを待ちながら空き地を一人整備するこのシーンは、ドラマを考察していく上でなんとも秀逸な構成場面となっているのです。
エンドロールは、ソフトボール大会の練習の約束を果たすため、空き地にやって来るガア助を高く俯瞰的に映し出します。作中では比較的珍しいカメラアングルで、少し客観性を持たせ、視聴者に始まったばかりのドラマの行く末を冷静に想像させます。夕刻の暮れかかる静かな時間の中、張り切って整備を進めるガア助を、松山千春の『君を忘れない』と共にカメラはゆったりと追っていきます。土管やドラム缶を寄せたり、放置自転車をどけたり、重い石のようなものを持ち上げたり、枯れ草を抜いたり…少しずつ少しずつ空き地が整っていくわけですが、そういう行為の一つ一つが、これから子どもたちと共にする時間の中で巻き起こる教師・平泉玩助の苦難の一つ一つを象徴するように描かれていると思うのです。
土に白線を引きベースを置いたガア助は、子どもたちを信じきって妙にうきうきと張り切っています。そんな彼に都会の子どもたちは無情です。石原美和子、片瀬優子、大川弘美たちが「誰も来るわけないのに、ずっと待ってたらおもしろいね!」と、ガア助を別の場所で嘲笑う声がエンドロールに交錯します。「ダサいよね、あの先生」「なんかクサいよね」、これが彼女たちの評価なのでした。
TVドラマ『みにくいアヒルの子』には、新着任の先生を拒否しようと結束した美和子・優子・弘美という3人グループ(特に美和子)に対して、ガア助がどのように信頼関係を築いていくかという観点があると思います。第1話のエンドロールはその対決関係を鮮明に描き出し、教師と子どもたちとの容易ならぬ学校生活を暗示させる非常に象徴的なシーンだと言えるでしょう。
美和子の「ずっと待ってたらおもしろいね!」という声高らかな台詞には、一方でガア助を困らせてやりたいが“ずっと待っているわけなんかない”という思惑もあるでしょう。しかし実際には、ガア助は雷と大雨が落ちても“待っている”のです。美和子の想定を超えていきます。
びしょ濡れの中、「ふざけんなよ…来なきゃ、タダじゃおかねえからな」と寒さで震え上がるガア助は、ちょっとした笑いを誘うオチでもあるでしょうが、“さあ、これからが教師の腕の見せ所だ”といった期待感を感じさせるとも言えるでしょう。まさに、枯れ果てた「空き地」からが教師・平泉玩助の始まりだったのです。
※引用図版の出典:
VHS『みにくいアヒルの子1』(1996年、日本コロムビア)
第1話「涙の一番星」のワンシーンより。


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